2008年7月 『哪吒、東海にて暴れる』|巧宛然(こうえんぜん)布袋戯公演地|カナダ・エドモントン市「世界民俗文化祭」
出演|台北市立平等小学校
哪吒(なた)、東海にて暴れる——巧宛然(こうえんぜん)布袋戯、カナダ巡演エドモントン市「世界民俗文化カーニバル」にて上演
招聘団体: エドモントン台湾同郷会
出演団体: 台北市立平等小学校・巧宛然掌中劇団
活動指導: 平等小学校 校長 陳金山
企画運営: 謝富安、李公元
公演期間: 2008年7月30日〜2008年8月11日
公演地: カナダ・エドモントン市、バンクーバー市
演目: 『哪吒、東海にて暴れる』
出演者:
前場主演:潘信廷、陳銘宸
前場助手:李逸蘋、林芸生
後場大鼓:許芷榛
後場通鼓:徐翌展
後場鑼鈔:王柏諺
後場小鑼:王柏逸
後場ソウナ(嗩吶):朱慧芯、呉佩庭
舞台裏スタッフ:
引率教員:李公元
芸術監督:紀淑玲
後場教師:周新怡
PTA会長:陳徳川
保護者代表:曾家湘
衣装デザイン・製作:鄭惠中
写真記録:劉慶隆
映像記録:羅得華
技術指導:
前場師匠:呉榮昌、黄武山
前場指導教師:李公元
後場師匠:呉威豪
後場教師:紀淑玲、周新怡
掌中の伝説「巧宛然(こうえんぜん)」──遠い物語……巧宛然を偲んで
文・紀淑玲(き・しゅくれい)先生
あれは、1987年のこと。
保守的な教育制度のなか、台湾本土の芸術は、
まだ社会の片隅で静かに息を潜めていた……。
「子どもたちの授業をもっと豊かにしたい」
そんなささやかな願いと、ひとつの偶然。
台大の教授が発足した「西田社」に参加し、
そして私は、李天祿(り・てんろく)老師父のもとで、古典布袋戯の学びを始めました。
それは、春風に包まれるような学びの時間でした。
老師父の掌の技に驚嘆し、
古典布袋戯の精緻さ、典雅さ、力強さに心を奪われました。
その技、その声は、
大地から響きわたる呼吸であり、
私たちの奥深くに眠るリズムと感情をそっと呼び起こしてくれました。
そうして、いくつもの困難を乗り越えたのです。
1988年3月11日、
平等小学校の子どもたち、先生、保護者、師匠、そして友人たちと共に、
私たちは一座の児童布袋戯劇団を立ち上げました。
その名を授けてくれたのは、老師父。
名は——巧宛然(こうえんぜん)。
掌に乾坤を宿し、素心(そしん)に美を醸す
台北市立平等小学校は、陽明山の平等里に位置する、児童数100名にも満たない小さな郊外の学校です。
1988年、布袋戯に魅せられた音楽教師 紀淑玲(き・しゅくれい) 先生が、台湾布袋戯の国宝芸師 李天祿(り・てんろく) 老師父を学校に招き、校長・教師・児童たちとともに、
児童布袋戯劇団 「巧宛然(こうえんぜん)」 を立ち上げました。
劇団は、李老師父の伝統流派「亦宛然」を継承し、
長男 陳錫煌(ちん・しゃくこう)、次男 李傳燦(り・でんさん)、
後場の名匠 李順發(り・じゅんはつ)、楊財明(よう・ざいめい)、
さらには嫡伝弟子である 呉榮昌(ご・えいしょう)、呉威豪(ご・いごう)、黄僑偉(こう・きょうい)、黄武山(こう・ぶざん)、林永志(りん・えいし) らが来校し、子どもたちに直接指導を行いました。
また、学校内では 紀淑玲 をはじめ、施慧珍、倪雨平、朱佩玲、黄建榮、陳秀峰、許建榮、陳俊嘉、李公元、周新怡、許金龍、張淑靜 ら多くの教師たちが、心を合わせて伝統芸術の継承と普及に尽くしてきました。
グローバル化の波が押し寄せる今、伝統芸術はますます希少で、貴重な存在となっています。
どれほど新しく見える創造も、「伝統」という豊かな土壌なくしては、空中楼閣にすぎません。
「巧宛然」 は一貫して伝統の形式と魂を守り続けてきました。
それは台湾社会に、そして世界に向けて、文化遺産の灯を守ると同時に、
未来の創造が根づく大地を耕してきたのです。
「巧宛然」は、ただ布袋戯を演じているのではありません。 民のあいだに静かに息づく「善」と「美」を、掌のなかに演じているのです。 そして、それは掌中の詩として、そっと語り継がれていく伝説となりました。
「巧宛然」劇団の特色・上演演目:
一、伝統的な布袋劇の前場・後場の形式を守り続けている。前場は人形の操演、後場は南管・北管などの伝統楽器の生演奏。現代台湾において後場の生演奏を保つ劇団は極めて少なく、子どもたち自身が演じる形式はさらに貴重である。 二、テレビ布袋劇の大型人形とは異なり、伝統的な小型人形を使用。繊細で生き生きとした人間らしい動きの操演技術、上品でユーモラスな台湾語による語り口により、伝統的な物語を演じる。そこに現代の流行語やユーモアを織り交ぜ、観客に伝統の美と楽しさの双方を味わわせる。 三、創団よりすでに二十一年を迎え、台湾の国民小学校において布袋劇芸術の継承が最も長く続いている記録を有する。
これまでに、『西遊記』シリーズより「水晶宮大騒動」、「火雲洞」、「猪八戒の縁談」、『水滸伝』より「武松、虎を打つ」、「武松、虎を間違えて打つ」、そのほか「運命の出会い」、「済公、白猿を収める」、「ご飯匙で猫と戦う」、「閻魔、石を裁く」などの演目を上演。 また、伝統劇の習得と上演に加え、新たな脚本にも挑戦し、『三匹の子豚』の童話アレンジや、児童自作による「おバカな皮の悩み」、「ブサ子が美しくなる話」、「怠け者国の怠け比べ」なども上演した。
「巧宛然」上演記録
1988年 中央映画公司製作《国歌—子供編》に出演。
1991年 ドキュメンタリー《巧宛然》が金馬賞にノミネート。
1992年 韓国「春川国際人形劇フェスティバル」に出演。
2000年 南投・台中の921地震被災地小学校・コミュニティを巡回公演。
2001年 カナダ・バンクーバー「台湾文化祭」及び小学校で公演。
2002年 日本「飯田国際人形劇フェスティバル」、「群馬県伊勢崎市まつり」に出演。
2004年 オーストラリア「キャンベラ多文化祭」及び小学校で公演。
2005年 台北市第一回創意人形劇コンクール第一位。
2006年 中山楼での総統による優秀教師晩餐会にて公演。
2007年 教育部「社会教育公益賞—功労団体賞」受賞。
2008年 《ぼくの人形劇》が台湾国際子供テレビ祭で「最優秀ドキュメンタリー」受賞。
カナダ「エドモントン世界民族文化祭」にて公演。
二〇〇八年カナダ遠征のはじまり
カナダ・エドモントン「世界民俗文化フェスティバル」
エドモントンに響く、移民のふるさと賛歌
1974年、カナダ・アルバータ州政府は、移民たちの尽力と貢献に感謝し、毎年8月の第一月曜日を「世界民俗文化の日」として制定しました。
翌1975年には、フォート・エドモントン・パークで多文化音楽展が開催され、静かに第一歩を踏み出しました。
そして1976年、11の民族文化団体が、153エーカーに及ぶホーレラク公園に集い、音楽、美食、手工芸、展示資料を通してそれぞれの文化を披露しました。移民たちの心に根付くふるさとの記憶が、異郷の地に美しく花開いた瞬間でした。
この自発的な園遊会は、年月を経て、エドモントン最大の祝祭「世界民俗文化フェスティバル」へと進化を遂げました。
33年の歩みの中で、かつて一日の催しは三日間のカーニバルへと拡大し、60以上の民族、80カ国近くの伝統文化が紹介されています。2006年には観客数が42万人を超え、1999年からは「北米100大フェスティバル」の一つに選ばれています。
エドモントン台湾同郷会——台湾文化外交の光となる
文/陳明雄博士
エドモントンは、北米で最も北に位置する大都市であり、アルバータ州の州都でもあります。人口は百万人を超え、活気に満ちた国際都市として、多くの国際大会を開催してきました。その寒冷な土地において、台灣人の数は多くありませんが、静かに、しかし確かに文化外交の種を蒔き続けてきました。
1974年以降、欧米や日本から移住した台湾人の博士たちが現地で働きはじめ、「エドモントン台湾同郷会」を結成し、中文学校の設立、会報の発行、さまざまなイベントの主催を行ってきました。1999年の台湾大地震(九二一地震)の際には、迅速に募金活動を行い、故郷への深い愛を示しました。
エドモントンの「世界民俗文化フェスティバル」では、60以上の民族がそれぞれの文化を披露し、音楽、舞踊、料理、手工芸を通じて世界との対話を紡ぎます。1980年、私たちは初めて「台湾館」の設立を申請しましたが、現地中国系団体の強い反発に遭いました。「台湾を訪れたことすらない人々が、どうして私たちの代弁者になれるのか?」——その問いが議論を呼び、最終的に主催側は私たちの正当性を認め、台湾館は誕生したのです。
それ以来28年間、台湾館はエドモントンで台湾の文化を発信し続けてきました。2008年、私たちは千人近くのボランティアを動員し、書道・写真・布袋劇の展示館、台湾料理館、伝統玩具館の三つの大テントを設営しました。中でも「巧宛然」の布袋劇は新聞・テレビでも大きく取り上げられ、大きな反響を呼び、台灣文化の精緻さをカナダに広める最高の機会となりました。異国の地で、台灣人の誇りと感動が鮮やかに花開いた瞬間でした。
(筆者:陳明雄博士。カナダ・アルバータ大学電子顕微鏡センター主任。エドモントン台湾同郷会の創設メンバーの一人として、長年にわたり台灣文化推進に尽力。)
「巧宛然」カナダ遠征――演目《哪吒、東海を騒がす》
2008年、「巧宛然」はカナダ・エドモントン台湾同郷会の招待を受け、毎年恒例の「エドモントン世界民俗文化祭」に参加し、一篇の忘れがたい物語を舞台に描き出しました……
『哪吒、東海を騒がす』:
神童哪吒(ナタク)は太乙真人のもとで修行を重ね、ついに仙術を会得。下山して両親に孝養を尽くすよう命じられます。ある日、遊び好きな哪吒は年老いた召使いとともに海辺へ遊びに行き、師から授かった宝物「混天綾(こんてんりょう)」を水に入れてかき回すと、東海の竜宮が大地震のごとく揺れ動きます。竜王・敖光は巡海夜叉を派遣しますが、不運にも哪吒により命を落とします。激怒した竜王は、三男・敖丙を先頭に、蝦兵蟹将(えびへい・かいしょう)の水軍を率いて哪吒に戦いを挑むことに――
この作品は中国の神話小説『封神演義』の一場面を元に再構成された伝統人形劇で、水底の竜宮、魚の精たち、躍動感ある蝦兵蟹将の人形たちが舞台上を所狭しと駆け巡ります。後方では台湾の子どもたちが太鼓と鑼を打ち鳴らし、熱気と華やかさを添えます。老若男女に愛される、古典の名作です。
台湾布袋戯、カナダを魅了す 私たちの分かち合い、私たちの感謝
巧宛然、2008年カナダ公演の記録
文/台北市平等小学校 校長 陳金山
二〇〇八年、平等小学校「巧宛然」掌中劇団は創団二十一年を迎えました。そして、この年は私たちにとって忘れがたい特別な一年でもあります。
多くの方々の善意と支援の結晶として、私たちは夢を叶えました——台湾の布袋戯という、土地に根差した芸術を携え、遥か遠いカナダへと旅立ち、エドモントンの地で感動の舞台を創り上げたのです。
この分かち合いは、限りない感謝と感動から生まれました。
子どもたちの努力、先生と師匠たちの献身、保護者の支え、支援者の温情、そして海外観客の熱い声援……
それはまるで、美しい旋律のように、心と心を繋ぐ調べとなりました。
この道のりを共に歩んでくださったすべての方々、そして、万物、天地、我らが故郷・台湾に深い感謝を捧げます。
感謝に満ちたこの季節に、私たちはこの旅路を多くの人々と分かち合いたい。
巧宛然が、さらなる縁と守りを結びますように。
渡航前の募金活動について
二〇〇八年二月中旬、カナダ「エドモントン台湾同郷会」から出演の招待が届きました。
国際舞台への再挑戦に喜びながらも、全額支援が受けられないという現実に悩みました。
しかし、一つの善き想いが、道を照らしてくれました。
教師、生徒、保護者が心を一つにし、ついにこの海外公演の夢を現実のものとしたのです。
2月14日
遠くカナダからの電話——エドモントン台湾同郷会の謝富安氏より出演の打診。小さな夢の種がこの日、心に蒔かれる。
3月11日
劇団設立21周年。先生たちの心に浮かぶ願い——もう一度、子どもたちを海外の舞台へと導きたい。
4月7日
公式招待状が届く。喜びの裏に、旅費確保の重圧がのしかかる。
4月24日
謝富安氏が自ら帰国し、平等小学校で説明会を開き、夢に実体を与える。
4月27日
士林慈諴宮媽祖遶境に参加。師生ともに香煙の中で、旅の平安と成功を祈る。
4月28日
計画書を紙・電子形式で送付。支援と協力を各方面に呼びかける。
5月19日
出国メンバーの公開選考。正選8名、補欠2名が選ばれ、演技訓練が本格化。
5月28日〜6月21日
新聞・テレビでの報道を受けて支援の輪が広がる。企業からの寄付、小学生からのギフト券、姉妹校のリサイクル資金など……すべての善意が力となる。
6月22日
猛暑の中(36.8℃)、淡水漁人碼頭にて5時間4ステージの募金公演を敢行。
6月24日
誠品書店(敦南店)で交通部の広報演劇を実施。
7月2日
夏休み海外集中訓練が始まる。子どもたちは日々、技と心を磨く。
7月7日
台北市教育局長の呉清山氏が学校を訪れ、子どもたちに激励の言葉を贈る。
7月12日
昼は李天祿老師十周年記念公演(淡水MRT)、夜は行天宮図書館にて芸文公演。
7月22日
台北晶華ホテルにて中選会主催の国際来賓接待公演に出演。
7月26日
最後の国内公演が台北植物園教育ラジオ局前で行われる。
その舞台は、まるで別れの祈りを奏でる掌中の詩であった。
驚きの台湾布袋劇、巧宛然 カナダへ飛ぶ
二〇〇八年七月三十日の夜、巧宛然の十人の小さな団員たちは、八人の先生や保護者、記録映像のチームと共に、「五つの心」──感謝の心、情熱の心、礼儀の心、真剣な心、そして安全の心──を胸に刻みながら、カナダへの旅路へと出発した。まるで伝統と魂が共に舞う巡礼のような、希望に満ちた文化の旅が、静かに始まった。
夢が叶い、愛城を魅了した。
文/李公元先生
2008年8月11日、巧宛然掌中劇団はカナダ・エドモントンでの公演を終え、感動とともに無事帰国しました。団員たちは皆、かけがえのない経験を得たと語り、この旅が一生の宝物となりました。とりわけ喜ばしいのは、世界六十カ国以上の団体が参加する民俗文化祭において、台湾から来た巧宛然だけが、地元の三つのテレビ局と二つの主流新聞に取り上げられたことです。台湾文化の光が、海の彼方で大きく花開いた瞬間でした。
7月31日、エドモントンに到着すると、僑務委員・黄添榮博士の尽力で、市長Mandel氏から歓迎を受け、市庁舎にて記者会見も行われました。台湾の子どもたちが夢の実現のために努力して資金を集めた姿に、市長も深く感動し、予定の15分の面会は1時間近くに及ぶ温かい交流のひとときとなりました。
8月1日、Edmonton Sun新聞には子どもたちが人形を操る写真が掲載され、その夜は野球場に赴き、中華青少年野球代表を応援。Global TVが取材し、夜のニュースで彼らの姿と物語が2度放送され、多くの視聴者の心を揺さぶりました。
8月2日には、エドモントン最大の新聞Edmonton Journalが紙面を割き、巧宛然の子どもたちが資金を募り夢を叶えた物語を詳しく紹介しました。彼らの純粋な努力が、異国の地にも感動を届けました。
8月3日、中華青少年野球団も民俗文化祭の会場を訪れ、休憩時間に子どもたちが即興で公演を披露し、観客の喝采を浴びました。同じ台湾を代表する二つのグループが、異国の地で出会い、励まし合い、深い絆を育んだひとときは、エドモントンの夏に温かな余韻を残しました。
2008年8月2日、カナダ・エドモントンで「世界民俗文化フェスティバル」が幕を開けました。六十を超える国々、五十以上の演目の中で、台湾を代表した「巧宛然」は、観客の心を惹きつけ、各国から絶賛の声を受けました。演目《哪吒、東海を騒がす》は、三日間で十二回の上演。多くの人々がメディア報道を見て訪れ、子どもたちの姿に喝采を送りました。
カナダの三人の老婦人が、「私たちは陳銘宸くんのファンよ」と語りかけると、彼はまるで小さなスターになったかのように驚きと喜びを感じていました。新聞に二度も写真が掲載された潘信廷くんは、その記事を大切に切り抜いて「お母さんへの誇らしいお土産にするんだ」と微笑みました。小学校を卒業し中学へ進学する許芷榛さんと徐翌展くんは、最後の舞台が終わった後、後輩たちに「もっと布袋劇を演じたいな」と名残惜しげに語りました。かつての厳しい修練が、いまやかけがえのない宝へと変わったのです。
現地の台湾僑胞たちも、子どもたちが台湾の伝統文化を海外で広めたことに深い感動を覚え、誇りに感じていました。三日間、老僑や留学生が絶えず子どもたちに励ましの言葉を送りました。
台湾同郷会やカトリック香港教会の信者たちの温かいもてなしの中、子どもたちはカナダの澄んだ空気、豊かな森、美しい暮らし、動物を大切にする心を体験しました。愛蒙頓には世界中から移民が集い、たまたま出会ったウクライナ出身の七十三歳の女性に「家に遊びにいらっしゃい」と誘われたこともあり、市民の優しさが胸に刻まれました。
旅の終盤、カナディアン・ロッキーとバンクーバーを巡る四日間の自助旅行では、子どもたちは常に楽器と人形を携え、どこでも即興で布袋劇を披露。外国人観光客たちはその可憐な演技に見入り、台湾という島に興味を抱くようになりました。台北駐バンクーバー弁事処の所長と副所長も特別に巧宛然を招待し、公演の成功と報道効果を讃え、「君たちは素晴らしい文化の小さな外交官だ」と賛辞を贈ってくれました。
カナダでの夢の舞台が幕を下ろし、子どもたちはその収穫を分かち合いながら、「毎年八月初めにまた集まろう」と誓いました。台湾を愛し、文化を伝えることを生涯のボランティアとして続けようと。今回の感動が絶えることなく、次なる夢の種火となるようにと願いながら——。
羽ばたき、夢をともに描く
平等小学校 九十六学年度 保護者会会長 陳徳川 記す
2008年、巧宛然掌中劇団のカナダ公演は、美しくも険しい挑戦でした。夢を叶えるため、保護者会は李公元先生と夜遅くまで何度も募金の方法を話し合い、最終的に選んだのは、もっとも真心のこもった道——子どもたちが一回一回の公演を通じて、技を磨き、夢のために共に努力する精神を体験させることでした。
特に6月22日、淡水の漁人碼頭にて、炎天下の中、保護者会が総出で手作りのクッキー、小饅頭、盆栽、平等里の特産品を持ち寄り、義売を行いました。収入は限られていましたが、正午から日が暮れるまでの4回の公演は、多くの人々の心を打ちました。その後のメディア報道と公演のおかげで、各方面から支援が寄せられ、7月中旬にはようやく目標額に到達しました。
募金活動中の苦労と感動は、今も心の奥深くに刻まれ、決して忘れることのできない大切な記憶となっています。
カナダ・エドモントンでの公演中、巧宛然の演目は地元の主要メディアに連日取り上げられました。数日が経つ頃には、小さな劇団員たちも自信を持って取材に応じるようになり、まさに貴重な国際経験となりました。その繊細かつ見事な演技は、外国の観客を魅了し、台湾布袋戯の美しさを世界に示したのです。
北京、四川、東南アジア、台湾から訪れた華僑の方々も繰り返し足を運びました。カナダに長年住むおじいさんおばあさんたちは、何度も何度も観劇に訪れ、別れを惜しみながらこう尋ねました──「台湾では本当に、今もこうした伝統芸能が残っているのですか?」──彼らの文化継承への深い関心に、胸が熱くなりました。
この体験は、ただの国際公演参加ではありません。六十を超える国々の文化を肌で感じ、小さな団員たちは初めて自分の名刺を世界へ差し出し、一人ひとりが小さな外交官のように台湾の魂を伝えたのです。
心より感謝を捧げます。心温まる招待と手厚いもてなしをしてくださった愛城台湾同郷会の皆様へ。惜しみない応援をくださったカトリック教会の信者の皆様へ。そして、台湾という土地から届いたあたたかな支援の数々へ……
感謝の想いを力に変えて。巧宛然が、さらに遠くへ、さらに永く、世界の舞台へと羽ばたいてゆけますように。
感動、そして分かち合い
前場主演 パン・シンティン(11歳)
カナダに来られてとても嬉しかった。でも時々、嬉しいのか悲しいのか分からなくなった。お別れ会の日、美味しいご飯を食べてとても楽しかったのに、次の日にはもうエドモントンを離れなければならないと思うと、涙が出そうになった……本当に、素晴らしい経験だったと思う。
前場主演 チェン・ミンチェン(11歳)
エドモントンの文化祭二日目、午後の公演が終わって公園をぶらぶらしていた時、突然、中華台北の少年野球チームのお兄さんたちに出会った!前は僕たちが球場で応援して、今回は彼らが僕たちの人形劇を観に来てくれた。コーチが「これから用事があるから、少し早めに公演してくれる?」と聞いてきたので、もちろん大丈夫!すぐに台湾館に戻って、先生がいないうちに、みんなで追加公演をした。終わった後、大の野球ファンの僕は、ジャケットとペンを持ってコーチや選手にサインをもらいに行ったんだ。今回の旅で一番楽しかった出来事!
前場助手 リー・イーピン(10歳)
エドモントンに着いたのは夜遅く、とても寒くて、まるで氷になりそうだった。けれど空港でシェ叔父さんたちの姿を見た時、一気に心が温かくなった。台湾に帰る時、空港でシェ叔父さんの目が赤くなっていて、今にも泣きそうだった。きっと、みんなも名残惜しい気持ちだったんだと思う。
前場アシスタント 林芸生(9歳)——
今回のカナダの旅、本当に嬉しかったです。イギリスの「石中の剣」、北欧のバイキング船、オランダの大きな木靴、嗅ぎタバコの壺、アラビアのベリーダンス、スペインのフラメンコ、インドネシアの影絵芝居……世界はなんて不思議で美しいのでしょう。そして、ティーバッグ、謝叔叔、小豆、林ガイドさん、宇宙人のような運転手さん、九十歳のおばあさんにも出会えました。優しく迎えてくれたすべての人に心からありがとう!
後場ドラム指揮 許芷榛(12歳)——
今回のカナダ公演は、翌展くんと私にとって最後の舞台。少し寂しいけれど、嬉しさも大きいです。無事に卒業まで続けられたことを誇りに思います。いつか誰かに「何を学んできたの?」と聞かれたら、私は胸を張ってこう言います。「私は台湾最古の伝統を受け継ぐ、巧宛然布袋劇団の一員でした」と。
後場ドラム奏者 徐翌展(12歳)——
とても幸運だったと思います。巧宛然が21年間続いてきた中で、私は海外公演に参加できたのですから。自分の努力と続けてきたことが間違っていなかったと証明できました。今はただ、「巧宛然、頑張れ!頑張れ!頑張れ!」と叫びたい!
後場小鑼 王柏逸(11歳)——
今回とても嬉しかったのは、巧宛然が新聞やテレビで取り上げられ、市長にも会えたこと。公演中は観客もたくさんいて、私たちはとてもやりがいを感じました。舞台の光は、台湾から届く心の光でした。
後場鑼鈔 王柏諺(11歳)——
初日の公演では、鑼鈔の位置を間違えてしまい、前の人に指揮が見えませんでした。二回目は先生が邪魔になってしまい、満足できない演奏でした。でも最終日、位置をちゃんと調整して、これまでの経験も活かして、気持ちよく叩けました。自分でも「うまくいった!」と思えました。
後方スオナ奏者/呉佩庭(11歳)——
エドモントンは本当に美しい街です。空気は澄み渡り、バスの運転手さんたちもとても優しく、道を渡るときはいつも私たちを気遣ってくれました。公演が終わった後も、たくさんの場所を訪れ、素敵な思い出ができました。この素晴らしい旅ができたのは、多くの人たちのおかげです。心から感謝します。
エドモントン台湾同郷会 創立先輩/黄添榮博士——
李先生、そして巧宛然の皆さん、ようこそ台湾の美しい歌声と伝統をエドモントンへ運んでくださいました。あなたたちの笑顔、明るい心、そのすべてが私たちの心を温かく包んでくれました。わずかなひとときでしたが、私たちの心は永遠に結ばれています。台湾文化の灯を絶やさぬよう、これからも歩み続けてください。またいつの日か、再び巡り会えることを願っております。
エドモントン天主教会 香港教友 リョウ・ヨンチョン(土地公)——
台湾から来た布袋戯の小さな師父たちへ――皆さんと出会えたことは、私にとって大きな喜びであり、光栄です。芸術に注ぐ真剣なまなざしと情熱に、心が震えました。暑さの中、幾度もの公演をこなしながら、布袋戯という素晴らしい伝統芸術を世界に伝える皆さんの姿は、本当に貴重で尊いものです。頑張ってください、これからも歩みを止めずに!
裏方教師 チョウ・シンイ——
地球を半周してたどり着いた、私たちの希望と夢の大地――カナダ。夢が叶った瞬間、心の高鳴りは言葉になりませんでした。ここでの毎日は宝物でした。自由に生きる動植物の姿、人々の尽きない情熱と支え合う心。私は満ち足りています。そして、感謝の思いでいっぱいです。巧宛然を愛し、支えてくださる皆さま、本当にありがとうございます。私は巧宛然が大好きです!
団員保護者代表 ツェン・ジャーシャン——
巧宛然と共に歩んだカナダ公演の旅――十八人の仲間がそれぞれの役割を果たし、見事にひとつの大きな夢を成し遂げました。この神聖な文化の旅が終わるのは、また新しい旅の始まりだと感じています。巧宛然、これからも羽ばたき続けてください。あなたたちの夢は、きっともっと遠くまで届くでしょう。
活動企画/エドモントン台湾同郷会 謝富安(Andrew)——
巧宛然の子どもたち、先生たち、心からありがとう。カナダでは、皆さんがまるでスターのようでした。街を歩けば「知ってる!」と声をかけられる――それは皆さんが布袋劇を真剣に学び続けた証です。この文化を絶やさぬよう、これからも頑張ってください!
衣装デザイン制作/鄭惠中——
この土地に心を捧げ、夢の実現に力を尽くせたこと、心から感謝しています。芸術を通じて、ふるさとへの深い愛を表せることは、この上ない喜びです。台湾、我愛你。
引率教師/李公元——
誇らしい旅、そして心に刻まれる奇跡でした。子どもたちが海外で輝く姿を見ることができたのは、私の人生で最も感動的な瞬間です。
芸術監督/紀淑玲——
すべてが、かけがえのない宝物のようでした。出会い、努力、達成感――この尊い時間に、心から感謝します。私は、この奇跡をずっと胸にしまっておきます。